耕三寺は、実業家・耕三寺耕三氏が母への感謝を込めて昭和時代に建立した仏教寺院で、国宝・重要文化財建築を模した15棟以上の建物が境内に立ち並びます。なかでも境内奥に広がる大理石庭園「未来心の丘」は、彫刻家・杭谷一東氏の作品が点在する白亜の丘で、しまなみ海道随一の映えスポットとして国内外から注目を集めています。
GUIDE
耕三寺の見どころ・歩き方
写真と一緒に、回り方のコツをまとめました

耕三寺とは——母への愛が生んだ昭和の大伽藍
耕三寺(こうさんじ)は、しまなみ海道・生口島で最も見ごたえのある寺院スポットです。入館料1,800円で境内・未来心の丘・金剛館すべてを見学でき、所要時間は1〜1.5時間が目安です。
昭和11年(1936年)から約30年をかけて建立された仏教寺院で、創建者は大阪の実業家・西山満吉(後に耕三寺耕三と改名)。母・孝子への感謝と菩提を弔うために、自ら私財を投じて建立しました。「母の寺」とも呼ばれるこの寺院は、日本各地の国宝・重要文化財を模した堂宇15棟以上が境内に立ち並ぶ、想像を超えるスケールです。
耕三寺の見どころ・歩き方
耕三寺 入口|山門をくぐる

瀬戸田港から北へ徒歩約10分、道路沿いに突然あらわれる極彩色の構えが耕三寺の入口です。
入口に立つのが山門です。国登録有形文化財に指定されており、京都御所・紫宸殿の御門と同じ様式を持ちながら、素材は木ではなく鋼鉄で造られ、その上に朱が塗り込まれています。扉の表面には龍・波・狛犬の浮彫が施されており、木造と錯覚するほど精巧な仕上がりです。
この朱と彫刻の密度は、いわゆる日本のお寺とは一線を画します。どちらかというと海外の寺院に近い独特の色彩で、初めて訪れると「本当に日本にある寺院か」と一瞬戸惑うほどの印象があります。
山門をくぐると参道が奥へ続き、左右に堂宇が立ち並びはじめます。境内は想像より広く、奥の未来心の丘まで歩いて10〜15分程度かかります。
耕三寺 中門|飛鳥時代のエンタシスを再現した表門

山門をくぐってすぐ目に入るのが中門(ちゅうもん)です。国登録有形文化財に指定されており、奈良・法隆寺の西院伽藍(楼門)を原型としています。
丸柱の上下を細くして中央をわずかにふくらませる「エンタシス」は飛鳥時代の建築様式で、安定感と美しさを生み出す技法です。外観の美のみを追求して2階への階段をなくした構造や、上層の勾欄に入る万字崩の組子など、細部まで飛鳥様式を完全に再現しています。柱の浮彫は戦後の耕三寺における堂塔装飾の基準作とされています。
建築様式は飛鳥時代に由来しますが、色味については飛鳥時代そのものなのか、耕三寺独自の解釈なのか判断がつかないほど独特の印象があります。
耕三寺 チケット売り場|入館料と料金案内

入館料(境内・未来心の丘・金剛館を含む)
| 区分 | 個人 | 団体(20名以上) |
|---|---|---|
| 大人 | 1,800円 | 1,600円 |
| 大学生・高校生 | 1,200円 | 1,000円 |
| 中・小学生以下 | 無料 | 無料 |
| 尾道市民 | 1,000円 | ─ |
耕三寺 五重塔(大慈母塔)|奈良・室生寺を原型とした境内の中心塔


境内中段の中央に建つ五重塔は「大慈母塔(だいじぼとう)」と呼ばれます。本堂・孝養の門と建物の軸線を一直線に揃えた四天王寺式の伽藍配置で、中段における中心的な建築です。
奈良・室生寺の五重塔(国宝)を原型としており、比較的忠実に再現されています。ただし基壇の高欄・初重の柱の仏像の浮彫・組物などには宝相華(ほうそうげ)の彩色が施されており、外観に耕三寺らしい独自の特色が加えられています。内部の心柱には鋼管が使用されており、耕三師の発案による昭和時代の技術が反映されています。
耕三寺 孝養門|日光東照宮・陽明門を超える豪華な装飾


孝養門(こうようもん)の原作は日光東照宮の陽明門です。耕三寺の建築のなかで唯一、原作の実測図が用いられており、各部の比例も陽明門と一致しています。
昭和28年、耕三師は文部省に1組だけ保管されていた陽明門の図面を申し入れて入手し、以来10年の歳月をかけて完成させました。
原作との相違は装飾にあります。下層柱には金銀泥彩色を施した聖衆来迎(しょうじゅらいごう)の浮彫、組物の表面には宝相華(ほうそうげ)と繧繝(うんげん)彩色が施されており、装飾の密度と華やかさは原作の陽明門を上回るほどです。日本一豪華な建築物と呼んでも過言ではない仕上がりです。
耕三寺 本堂|平等院鳳凰堂を原型とした藤原時代様式の伽藍


本堂は京都・宇治の平等院鳳凰堂を原型として建立された国登録有形文化財です。中央の中堂、左右対称に配された翼廊、中堂背後の尾廊という平等院鳳凰堂式の構成を持ちます。
入母屋の屋根・切妻・寄棟・腰屋根、肘木垂木の大面取など、藤原時代の仏教建築様式を忠実に取り入れており、これが本堂最大の特徴です。外部の組物表面には宝相華唐草文と繧繝彩色が施され、極彩色の装飾は原作の平等院よりも一段と華やかな仕上がりになっています。
本堂前面には約8間角・総白大理石造りの大礼壇があり、腰鏡には瑞華霊禽(ずいかれいきん)の浮彫が施されています。
耕三寺 千佛洞地獄峡|全長350mの地下洞窟と石造千体仏



千佛洞地獄峡(せんぶつどうじごくきょう)は昭和30年(1955年)に起工、39年(1964年)に完成した地下洞窟です。地下約15m、全長350mの隧道(トンネル)が本堂西側の至心殿横から救世観音大尊像そばまで貫いています。
洞窟の壁面は富士山の熔岩と浅間山の焼石を鉄筋コンクリートで固めた岩組で構成されています。中間3ヶ所には高さ約10m・数十平方mの洞室があり、石造の仏諸尊千体が奉安されています。滝が流れる洞内には、源信僧都の『往生要集』を視覚的に表した地獄極楽画図の額が数十面奉懸されており、仏教の世界観を体感できる空間になっています。
耕三寺 未来心の丘|白亜の大理石が広がる絶景空間


耕三寺の境内を奥へ進むと、突然、白一色の世界が広がります。「未来心の丘(みらいしんのおか)」です。
イタリア産の大理石約5,000トンを使用して造られたこの庭園は、彫刻家・杭谷一東(くえたにかずひがし)氏が30年以上の歳月をかけて制作した大型芸術作品です。


ここまで紹介したのは耕三寺のほんの一部です
山門・中門・孝養門・五重塔・本堂・千佛洞地獄峡・未来心の丘——これだけでも相当な見ごたえですが、境内にはまだ潮聲閣・救世観音大尊像・鐘楼など15棟以上の建築物が立ち並んでいます。ここでは全部は紹介しきれません。
耕三寺は写真で見るより実物の密度が段違いです。ぜひ実際に足を運んで、続きを自分の目で確かめてみてください。
耕三寺のおすすめ時間帯|早朝か夕方前が狙い目
耕三寺を訪れるなら、開館直後の9時台か夕方16時前後がおすすめです。
早朝(9:00〜10:00)は観光客が少なく、境内をほぼ貸し切りで歩けます。朝の光が孝養門や本堂の極彩色に当たる時間帯で、撮影にも最適です。団体ツアーが入りはじめる10時以降は一気に混雑します。
夕方(15:30〜16:30)は未来心の丘から夕景を狙える時間帯です。西向きの丘から瀬戸内の島々に日が沈む方向を眺めることができ、白い大理石と夕焼けのコントラストは早朝とはまた別の表情を見せます。入館は16:30までのため、遅くとも16:00には入場してください。
昼間(11:00〜14:00)は混雑のピークで、未来心の丘は照り返しが強く夏季は特に過酷です。この時間帯に行く場合は帽子・サングラス・水分が必須です。
耕三寺周辺の観光|瀬戸田の街と組み合わせて楽しむ
耕三寺のある瀬戸田は、生口島の中心的な港町で、レモンの産地としても知られています。耕三寺の周辺には平山郁夫美術館、瀬戸田の古い街並み、レモンスイーツの店舗などが集まっており、半日〜1日かけてゆっくり楽しめるエリアです。
徒歩圏内のサンセットビーチ瀬戸田は夏の海水浴スポットで、耕三寺と組み合わせて1日で楽しめます。しまなみ海道をさらに進むと、大三島に大山祇神社があります。全国一万社の総本社で、樹齢2,600年の御神木が見どころです。
サイクリングでしまなみ海道を走る場合も、瀬戸田エリアは多くのサイクリストが立ち寄る休憩ポイントで、駐輪スペースも整備されています。
耕三寺へのアクセスと駐車場
生口島へは、尾道港からのフェリー(三原港経由もあり)で約40分〜1時間。瀬戸田港から耕三寺までは徒歩約10分です。サイクリングでしまなみ海道を通過する場合は、島内サイクリングルート(ブルーライン)から外れますが、立ち寄りの価値は十分あります。
駐車場は無料と有料の2種類があります。
耕三寺博物館・平山郁夫美術館 無料駐車場(約48台)が最もおすすめです。耕三寺まで徒歩約50mで、無料で利用できます。
有料駐車場は近隣に4か所・合計56台分あり、料金は普通車・軽自動車とも1日500〜600円程度です。無料駐車場が満車の場合はこちらを利用してください。
入館料がかかるため、訪問前に公式サイトで最新の料金・開館時間を確認することをおすすめします。未来心の丘は開放的な空間で日差しを遮るものがなく、夏季は非常に暑くなります。訪れる時間帯は早朝か夕方前を選ぶと快適です。
基本情報
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